体脂肪が落ちる場所は選べる?

体脂肪はすべて同じではありません。脂肪がどこから落ちるかがなぜ重要なのか、そして食事がどのような役割を果たす可能性があるのかを、管理栄養士が研究結果をもとに解説します。

Gundeep Sohanpal
-
認定実務栄養士(栄養学・食事療法学修士)
6 分で読める

脂肪がどこから落ちるかは何で決まる?

減量するとき、多くの人は「どれくらい落としたいか」だけでなく、「どこから脂肪を落としたいか」にも希望があるものです。

なかなか落ちないお腹の脂肪を減らそうとしたことがあるなら、「部分痩せはできない」と聞いたことがあるかもしれません。例えば、腹筋運動を増やせば体幹の筋肉は鍛えられますが、お腹の脂肪だけを狙って燃焼させることはできません。

脂肪をどこから落とすかを体に指示することはできませんが、すべての体脂肪が同じように働くわけでもありません。脂肪の種類の違いを知ることで、減量や体重計の数字、さらにはどんな食事を選ぶかについての考え方が変わるかもしれません。

visceral_fat_vs_subcutaneous_fat_1.png

皮下脂肪 vs 内臓脂肪

「体脂肪」はすべて同じもののように話されがちです。しかし、脂肪が体のどこに蓄積されているかによって、健康への影響は大きく異なります。

体に蓄積される脂肪には、大きく分けて皮下脂肪と内臓脂肪の2種類があります。

  • 皮下脂肪は、皮膚のすぐ下に蓄積される脂肪です。比較的柔らかく、目で見たりつまんだりできます。
  • 内臓脂肪は、腹部のより深い場所で、肝臓や腸などの臓器の周りに蓄積される脂肪です。目で見たり、触ったりすることはできません。

どちらも体に蓄積される脂肪ですが、内臓脂肪の方が代謝的に活発です。内臓脂肪が多いほど、インスリン抵抗性、血中脂質の上昇、炎症、心血管疾患のリスク上昇と関連することが分かっています (1,2)。

鏡で見える皮下脂肪の方が気になりやすいかもしれませんが、目に見えない脂肪を減らすことの方が、健康には大きな影響を与える可能性があります。

食事の種類によって脂肪が落ちる場所は変わる?

最近の研究では、健康的な低炭水化物食と健康的な低脂肪食の効果が比較されました。この研究には、DIETFITS減量試験に参加した成人609人が含まれ、いずれかの食事法を12か月間続けるよう無作為に割り当てられました (3)。

健康的な低脂肪食グループは1日平均57 gの脂質を摂取し、健康的な低炭水化物食グループは1日平均130 gの炭水化物を摂取していました。重要なのは、どちらのグループも極端な食事制限を求められていなかったことです。参加者は、長期的に続けられる健康的な低脂肪または低炭水化物の食べ方を見つけるよう勧められました。

全体的な減量幅については、2つのグループの間に統計的に有意な差はありませんでした。

12か月間で、健康的な低脂肪食グループは平均5.3 kg、健康的な低炭水化物食グループは平均6 kg減量しました。

ところが研究者が、その脂肪がどこから減っていたのかを調べると、興味深い違いが見つかりました。6か月時点で、低炭水化物食グループは低脂肪食グループの約1.5倍の内臓脂肪を減らしていました。この傾向は12か月まで続きましたが、差が最も大きかったのは研究開始後の最初の6か月でした。

つまり、全体的な減量幅はほぼ同じだったものの、低炭水化物食では臓器の周囲にある深部の脂肪がより多く減る傾向が見られました。

低炭水化物食で内臓脂肪が減りやすいのはなぜ?

内臓脂肪は代謝的に活発なため、皮下脂肪と比べてインスリンなどのホルモン変化により強く反応する可能性があります。

炭水化物を食べると、血糖値とインスリン値が上がります。インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞へ運び、エネルギーとして使ったり蓄えたりするのを助けます。同時に、インスリンは脂肪の利用に対する「オフスイッチ」のように働き、脂肪をエネルギー源として使わず、蓄えたままにするよう体に伝えます。内臓脂肪はこのインスリンによる「オフ」のシグナルにより反応しやすいため、炭水化物が多く、その結果インスリン値が高くなる食事では、内臓脂肪が蓄積しやすくなる可能性があります。

上記の研究では、炭水化物を少なくした食事によって血中を循環するインスリン量が減り、内臓脂肪をエネルギーとして利用しやすい状態になったと考えられます。

だからといって、炭水化物が脂肪減少を妨げるという意味ではありません。どちらのグループも体重と内臓脂肪が減りましたが、低炭水化物食グループの方が割合としてより多くの内臓脂肪を減らしました。また、極端な低炭水化物食ではなく比較的穏やかな食事だったため、普段の食生活にも取り入れやすい結果といえます。

低炭水化物食ってどんな食事?

この研究でうれしいのは、参加者が数週間だけ厳しい低炭水化物食をしていたわけではないことです。1日130 gの炭水化物という比較的無理のない食事を、丸1年間続けていました。

朝食: チアシードと低脂肪乳を加えたオートミール(炭水化物37 g)

昼食: グリーンリーフレタス、ツナ、ローストパプリカ、3種の豆ミックス(炭水化物19 g)

夕食: ミックス野菜(ブロッコリー、にんじん、コーン、カリフラワー)入りスパゲッティとローストチキンの胸肉(炭水化物57 g)

軽食/その他: 低脂肪ギリシャヨーグルトといちご(炭水化物16 g)

合計: 炭水化物129 g

このように、1日約130 gの炭水化物は比較的無理のない量です。減量目標をサポートしながら、エネルギー源となる炭水化物を食事に取り入れることができます。

炭水化物の総摂取量を減らすには、次の方法がおすすめです。

  • パン、米、パスタなどの炭水化物を多く含む食品の量を少し減らし、食物繊維が多いものや全粒穀物の食品に置き換えてみましょう。食物繊維を増やすことで、少ない量でも満腹感を得やすくなります。
  • 食事で炭水化物の量を減らしたら、代わりに増やせる食品を探してみましょう。たんぱく質の量を増やしたり、サラダや野菜をもう1品追加したりするのもおすすめです。
  • 炭酸飲料やフルーツジュースなどの砂糖入り飲料を減らし、できれば控えて、水や無糖の飲み物に置き換えましょう。こうした飲料は炭水化物やカロリーを増やす一方で、満腹感が長続きしないことがあります。

お皿のバランスを少し変えるだけでも、炭水化物の量を減らしながら、しっかり満足感を得やすくなります。

fatsecretアプリで1日分の食事をすべて記録してみましょう。普段の1日の食事をおおまかに入力するだけでも、その日の炭水化物摂取量を確認できます。上の提案の中で、試してみられそうなものはありますか?

内臓脂肪が見えないなら、減っているかどうやって分かる?

内臓脂肪の変化は、見た目だけでは分かりにくいものです。画像検査で測定することはできますが、ほとんどの人にとって定期的な検査は現実的でも必要でもありません。

そこで役立つのがウエスト周囲径です。内臓脂肪そのものを直接測るわけではありませんが、ウエスト周囲径が徐々に小さくなっていれば、腹部の脂肪が減っている目安になります。

毎回同じ場所を、できるだけ同じ条件で測り、1回の数値ではなく長期的な変化を見ていきましょう。

ポイント

  • 体脂肪はすべて同じではありません。内臓脂肪は臓器の周りの深い部分に蓄積され、目で見たりつまんだりできる皮下脂肪よりも代謝の健康に大きな影響を与えます。
  • なかなか落ちないお腹の脂肪を、狙った場所から落とすことはできません。特定の部位だけを狙って脂肪を減らすことはできませんが、内臓脂肪は減量や生活習慣の改善によって減りやすい脂肪です。
  • 適度に炭水化物を減らした食事には、内臓脂肪を減らすうえで追加のメリットがあるかもしれません。研究では、極端な低炭水化物食にしなくても、炭水化物を減らすことで内臓脂肪がより減りやすくなる可能性が示されています。
  • 進捗を確認するときは、体重だけを見ないようにしましょう。ウエスト周囲径の変化と長期的な体重の推移を組み合わせることで、高額な画像検査をしなくても腹部脂肪の変化をより把握しやすくなります。
  • 一番大切なのは、続けられる方法を選ぶことです。余分な体脂肪を減らすこと、体を動かすこと、栄養バランスの良い食事を無理なく続けることは、どれも内臓脂肪を減らし、代謝の健康を改善するのに役立ちます。

参考文献

  1. 異なる脂肪組織蓄積部位とインスリン抵抗性の関連:観察研究のシステマティックレビューおよびメタ解析 (2015). doi: 10.1038/srep18495
  2. 内臓脂肪、腹部筋肉、冠動脈石灰化の関連:Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis の横断解析 (2024). doi: 10.1016/j.amjcard.2024.02.030
  3. 12か月間のランダム化比較試験における、低炭水化物食と低脂肪食の介入が二重エネルギーX線吸収測定法で推定した内臓脂肪に与える影響 (2026). doi: 10.21203/rs.3.rs-4926524/v1.
Gundeep Sohanpal
認定実務栄養士(栄養学・食事療法学修士)